第4回論文精読セミナーを行いました
平成2 9 年8月26日( 土) に第4回論文精読セミナーをおこないました。
今回取り上げた論文は下記の2 つである。
①Nothing Boring About Boron Lara Pizzorno(2015)「ホウ素ほど興味深いものはない」 担 当:Y.Sさん
②Nitric Oxide (NO): An Emerging Target for the Treatment of Glaucoma. Megan E. Cavet,ら(2017) 「一酸化窒素( NO ):緑内障治療の新しいターゲット」担当:S.Mさん
①の要約は、下記のとおりである。
抄録:ホウ素は、植物、動物、人間の健康にとって必要である代謝において多様な、そして非常に重要な役割を持つ微量栄養素であり、最近の研究で示唆されているように、地球上の生命を進化させる可能性もある。ホウ素は、以下のような理由から、重要な微量ミネラルであることが証明されている。
(1)骨の成長と維持に不可欠である。
(2)創傷治癒を大幅に改善する
(3)体内のエストロゲン、テストステロン、ビタミンDの使用に有益な影響を及ぼす。
(4)マグネシウム吸収を高める。
(5)高感度C反応性タンパク質(hs-CRP)および腫瘍壊死因子α(TNF-α)などの炎症性バイオマーカーのレベルを低下させる。
(6)スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、およびグルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素のレベルを上昇させる;
(7)農薬による酸化ストレスや重金属毒性を防ぐ。
(8)脳の電気活動、認知能力、および高齢者の短期記憶を改善する。
(9) S-アデノシルメチオニン(SAM-e)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD +)などの重要な生体分子の形成および活性に影響を与える。
(10)前立腺がん、子宮頸がんと肺がん、および多発性非ホジキンリンパ腫などの多数のがんにおいて予防的および治療的効果が実証されている。
(11)従来の化学療法剤の副作用を改善するのに役立ち得る。
②の要約は下記のとおりである 【要旨】緑内障の進行における主なリスク要因はIOP(眼圧)の上昇であり、それは本来の流出経路(線維柱帯とシュレム管)を通った水流出の減少により引き起こる。現在のところ、本来の経路を主なターゲットとした治療法はない。一酸化窒素(NO)は、内在性NO合成酵素により産生される細胞内シグナル分子であり、平滑筋細胞への作用を介した血管拡張における重要な役割がよく知られている。生理的条件下で、NOは様々な眼の影響の多くを調整しており、IOPの維持も含む。NO供給がIOP低下効果をもたらすことが、前臨床モデルと臨床研究の両方で示され、それは主に本来の流出組織における細胞容積や収縮性の変化を介するものであった。本レビューでは、IOP調節における内因性NOとNO供給の役割と作用メカニズムについての現在の知見を評価することに焦点をおいている。緑内障病理学(すなわち、眼の血流と視神経障害への影響)において、鍵となるNOの機能に関するデータもまとめている。そして、緑内障治療におけるNOの将来の治療適用の可能性について議論している。
①は、ホウ素がRNAをはじめ生体内の多くの分子と結合するためであり、ホウ素の多様な働きに驚かされる。②はハーバード大学が疫学研究で野菜の硝酸塩摂取が緑内症予防効果があることを2017年発表したが、本総説は、それ以前に緑内症とNOの関連研究が多くあること示している。疫学研究で緑内症予防が偶然発見されたことでは無いことを示す論文であった。